治療の極めて難しい、生まれつきの貧血があるのを知っていますか?
再生不良性貧血は、100万人に数人しかみられないと言われている希少な病気です。
10代の子供にしばしば発症がみられる、再生不良性貧血について解説します。
血液は白血球や赤血球などの血球が数多く集まってできています。
これらが先天的な異常により、産出されなくなると貧血症状が表れるだけでは済みません。
重い病気が合併しやすい難病、再生不良性貧血の原因や症状、治療法などを紹介します。
血球に分化する造血幹細胞が減ると、血球が作られなくなるので貧血が起こります。
この仕組みで起きる貧血のことを再生不良性貧血といい、昔は再生不能性貧血や汎骨髄癆とも呼ばれていました。
貧血のなかでは特に治療が難しい種類といわれており、特定疾患に指定されています。
再生不良性貧血を発病する人は、世界的にみてもかなり少ないです。
患者数は、欧米では年間100万人に2〜3人、日本では5〜6人の割合でしかみられません。
男性よりも女性に若干多くみられ、10代と70代での発症が目立つという特徴もあります。
再生不良性貧血には、先天性のものと後天性のものがあります。
このうち先天性の再生不良性貧血のことを、先天性再生不良性貧血もしくはファンコニー貧血といいます。
ファンコニー貧血の原因は、生まれつきの遺伝子の異常です。
遺伝子異常によって、造血幹細胞に細胞がプログラム死するアポトーシスが起こりやすくなるため、血球が減り貧血が引き起こされます。
ファンコニー貧血を確実に治す方法は未だありません。
昔はファンコニー貧血の子供は、成長して大人になることすら難しいと言われていました。
しかし現在では、効果的な支持療法や造血回復を図る治療法がありますので、決して長生き不可能ではなくなっています。
ファンコニー貧血や後天性の再生不良性貧血の症状は、さまざまです。
自覚症状には息苦しさ、動悸、めまい、出血が止まらない等がありますが、病態が軽度から中等度の場合は、検査を受けるまで気が付かないことも珍しくありません。
このほかにも、顔色が悪くなる、皮下出血により赤黒いアザができる、眼球の網膜から出血する眼底出血が起きるといった症状が表れます。
合併症は、治療せずにいると命を落としかねない重篤なものが多いです。
多臓器不全に陥る敗血症、あちこちの血管で血液が凝固する播種性血管内凝固症候群、ヘモクロマトーシス、心肥大、心不全、不整脈、糖尿病などが例として挙げられます。
再生不良性貧血の診断には、末梢血塗沫標本検査、血清生化学検査、血液機能検査、骨髄シンチグラフィ、骨髄穿刺など多種の検査が必要です。
治療法は重症度や年齢などを考慮し、慎重に選択しなければいけません。
なお、再生不良性貧血の程度には軽症、中等症、重症の3つがありますが、それぞれは小顆粒球と血小板と毛赤血球の数によって分類されています。
治療法には大きく、支持療法と造血回復を目的とした治療の2種類があります。
前者の支持療法とは、生活の質を高めるための療法のことであり、この貧血に対しては、輸血や白血球の産出を促すG-CSFの投与を行います。
後者の治療法は多種で、免疫抑制療法、蛋白同化ホルモン療法、骨髄移植などがあります。
ただし副作用があるため経過の観察が重要であり、合併症にも注意しなければいけません。